やっちまった(某宿題)

こう、クソベッタベタなどっかのハーレクイン小説のノリで。勢いよく。

  • これまでのあらすじ

大国同士が長年争っている世界の、ほんのかたすみの小国のお話。
赤ん坊の頃孤児になり、傭兵隊の隊長に拾われた「赤巻毛の」シュテディファイン(シュティ)は、さる事情で隊に同行することになった子爵令嬢のパメラドニア(ドーニャ)に淡い恋心を抱いてしまう。
二人の仲が深まるにつれ、この小国も否応なしに大国同士の争いに巻き込まれていくのであった…

「マー姐ェ、どうしよう、オレどうしよう…」
蜂蜜酒の入ったカップ片手に簡易テーブルに突っ伏しながら、シュティは大きなため息を吐いて、目の前の女戦士・マーサにぼやいた。
「ばかだねえ、悩むぐらいならさっさと告白って玉砕すんのが男ってもンだよ」
「うあー!だって、玉砕は嫌なんだってばァ!」
マーサは本日5杯目のラムをぐいっと片づけると、空き瓶の底で軽くシュティの頭を小突いた。
「そういうウダウダした態度が情けないっての!ケネスのウスラボケジジィを見ろ、女にフラれンのが日課になってるだろ?あそこまで行くと芸だよ、芸!」
シュティの脳裏に浮かぶのは、つい先だって酌婦兼娼婦の女たちによってたかって(しかも笑いながら)蹴り飛ばされていた禿頭の老人の姿。
思わずぶんぶんと頭を振ってイメージを打ち消すと、蜂蜜酒をマーサに見習って片づけた。
「そー言われると…カチンとくるぜ、マー姐ェ。
よし、オレやるかんね。ブーケの用意たのむぜ」
シュティは思い切り立ち上がって、ドーニャがいつも座っている木陰へと意気揚々と出掛けていった。


しかし、結局は彼女の前に立ってしまうとシュティは何も言えないのであった。
「私はまだ下手くそだけど、叔母上が刺繍が得意でね…特に薔薇の花なんかもう本物みたいに…って、どうしたの?」
「あ の、いや 別に?」
「顔ぴくぴくさせちゃって、大丈夫?それとも私の顔そんなに面白かったかしら?」
本気で心配している顔で、シュティの顔をのぞき込む。
「いや だから だいじょ ぶ」「あ、ゴミ付いてるわ」
ドーニャの細い指が、シュティのぼさぼさ頭に触れると、反射的にシュティは飛び退いた。
「!!!!!」

顔面蒼白で汗もだらだらの、シュティ。
それを怯えた顔で見つめる、ドーニャ。

二人の考えていたことが、今まさに一致した。


「どうしよう」

  • エンディング

ドーニャの叔父の策略によって小国も本格的に大戦に巻き込まれてしまった。
今やたくましく成長し、傭兵隊長の片腕になったシュティは、同盟国の王族に嫁ぐことになったドーニャに最初で最後の愛の告白をする。答えは「ええ、私も」。
後年、出世を遂げたシュティは若くして病死したドーニャの墓を見つけ、一人涙する。
墓に捧げたのは、「いつか」と約束していながらあげられなかったもの。ドーニャの好きだった薔薇の花束だった。